序章        

 

 

参加表明者は17名。

告知からわずか2週間で締め切ったにもかかわらず、これだけの人数が集まるとは正直思ってもみなかった。
まったく嬉しい誤算だ。
 

「ふふ・・・実にそうそうたるメンバーだな。不足はない」

モニターを見つめながら、込み上げる笑いを抑えることが出来ない。
――そう、不足はない。あるはずもない。彼らなら誰もが申し分のない生贄となってくれることだろう。

皆はまだ気付いていないが、今回のオフは「USJで皆と一緒に遊んで親睦を深めましょう」などという子供じみた企画ではない。
バトル。そう、バトルだ。
”本番”はその夜に設営された酒宴にこそある。そこで・・・彼らにはお互い戦い合ってもらう。
私を愉しませるために。

勝者には何も与えられない。ただ、最後に残ったたった一人の敗者にのみ・・・屈辱と羞恥に満ちた罰を用意してある。
生き延びるために、彼らは必死に足掻いてくれることだろう。そしてその姿を、私は安全を保障された位置から悠然と眺めつつ、ただ愉悦に浸っていれば良い。なんと豪奢なことか。
この「絶対権利」を得るために、私は今回の予算に多額の助成金を投入したのだ。安いものだ。
――そのかわり誰にも文句は言わせない。絶対服従してもらおう。

 

私は参加者全員に返信メールを送ると、「ゲーム」に使用する備品のチェックを始めることにした。

 

 

 


”その時”への工作(1)        

 

 

今回のこの「ゲーム」はポイント制を採用する。明確に順位を出し、地獄に落とされる「最下位」の者を判りやすく晒したいからだ。
戦いはランダムに選ばれた二人による「対戦」の形式をとる。勝敗を決める採点は審査委員を務める私が「技術点」、そしてもう一人の幹事であるZou−さんが「芸術点」を担当してそれぞれを加算していく。
状況が一目でわかる得点表も既に作ってある。

 

ルールは単純にして明解だ。しかし決して公平なものではない。
人によって得手不得手がハッキリと分かれる分野だろう。しかしそれでいいのだ。
私が期待しているのはむしろそれを不得意とする者たちの戦いぶりだった。それはきっと私に多くの笑いと、大きな「自信」を与えてくれるに違いない。
もう一度言おう。これは「私自身が愉しむため」だけに企画したものなのだ。文句は言わせない。

 

 

参加を希望する者は、件名「USJ参加キボンヌ」で私にメールを送り、こちらが指定した3つの項目についての回答を義務つけられている。

(1)とっておきのダジャレ

(2)TACさんを褒め称える言葉

(3)自己PR(10文字以下)

 

返って来たメールを見返してみると、実に個性的な面白いものもある。しかし彼らの多くはきっと、このメールは「参加表明」の人数を知る事こそが趣旨であり、3つの質問はいつものオフザケとしてあまり重要に考えていないに違いない。身内だからという油断からか、返信すらしてこない者もいる。

ふふ・・・・・嘗められたものだ。
彼らは何もわかっちゃいない。そう、戦いはすでに始まっているのだ。

 

実はこのメールの内容如何によっては、今回のゲームにおいて事前にポイントを与えることになっている。
私を唸らせる回答には一つにつきポイント先取できるのだ。面白い回答を送ってきた者は自動的に有利なスタートを切れるということだ。

そしてもう一つ。

受付期間中、我がHPのトップページに設置された指定の箇所をクリックする事で私宛のメールフォームが開くようになっていた。
親切にも自動的に件名は記入済みの状態でだ。

――――「USJ酸化キボンヌ」と。

 

私が指定した件名は「USJ参加キボンヌ」だ。この誤字すら私のボケと断じていたとしたらそれは彼らの勝手なミステークだ。きちんと「参加」に修正してあった者にだけ、さらに2ポイント。
既にこのトラップに引っ掛かっている者が6名もいた。

 

さらに。

不届きにもメールを返さなかった者、質問に答えてなかった者には手ひどい減点を課した。
最大でマイナス8ポイントが2人。この段階で、トップとの差は絶望的にひらいてしまった。
ゲームでの奮闘によっては逆転も必ずしも不可能ではあるまい。ただこの2名のうちどちらかが血も凍る「罰ゲーム」へと転落する可能性は濃厚になってきた。
私にとって幸運だったのは、この2名がいわゆる「身内」であったこと。つまり、

良心の仮借なく地獄に叩き落せるということだ。

 

ヤーマ。そしてヘビメタ。
オイシイぞ。お前たちには踊ってもらう。

――死の舞踏を。

 

 

 

 

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