(その7) ドアの内張りに”いろはにほへと”。
ここまでくると、もう中途半端に「ノーマル」の部分を残したくないというヘンな意地が出てきます。
次はドアです。どノーマルのままです。コイツも和風にしちゃいます。
漠然と考えていた案は「壁紙を貼る」。
TACのイトコである”ぼっくん”は、フリーのインテリア職人。相談してみたら快く引き受けてくれました。
彼が持ってきた壁紙のサンプルカタログの中から、和食店の座敷部屋に使われていそうなシブい壁紙(いろはにほへと〜が書かれてるヤツ)を選択。すぐ発注してもらう。
GWの4月30日。TACは仕事だが、ぼっくんは休み。この日に百鬼夜号を1日ぼっくんに預けて、両ドアの内張りと天井(百体目の妖怪が描かれてあるその余白部分)に壁紙を貼ってもらうことにした。
かくして、その日が来たる。
妖怪百鬼夜号は、また一つ新たな変貌を遂げるため・・・ぼっくんの元へとドナドナしていった。
・・・まさか、あんな恐ろしい災厄がその身に降りかかるという事も知らずに・・・。
仕事が終わり後片付けをしているTACに、ぼっくんからの携帯電話が鳴る。
TAC 「もしもし」
ぼっくん 「・・・車、出来ました・・・」
TAC 「おおっ、サンキュー!どうや?エエ感じか?」
ぼっくん 「・・・うん、まあ・・・」
TAC 「・・・?・・・なんや?どっか失敗でもしたんか?」
ぼっくん 「いや、その・・・。まあ、とりあえず見てよ。話はそれからという事で」
すっげー嫌な予感。
我がもとに帰ってきた百鬼夜号。
さっそくドアを開けて見ます。
完璧です。
「おおおおおっ!ええやん!ええ感じやん!」
TAC、いたく感動。
ドアの内張りはビニール製なので直接壁紙を貼る事は不可能らしく、型を合わせて切り出したベニア板に貼ってからドア裏に取り付けたそうです。実に丁寧な仕事です。スンバらしい。
しかし、当のぼっくんは何か浮かない顔をしています。
さっきの電話での応対も気になるし、何か重大な事を告白したいのに出来ないでいる様子。
TAC 「・・・おい。何があったのよ」
ぼっくん 「うん・・・い、家に帰ってからメールで送るわ」
TAC 「何言ってやがんだ。怒らねーから今ココで言えよ。何があったんだ」
ぼっくん 「あのね、実はさ・・・」
TAC 「・・・ん・・・?」
ぼっくんの言葉を最後まで聞く前に、TACの目が百鬼夜号の天井の、とある一点に異変を捕らえます。
場所は「鵺」の腰のあたり。
なんだ?このビニールテープは・・・。
丸く切り取られた黒のビニールテープ。
あきらかに何かを塞いでいる感じです。
粟立つぼっくんの表情。
首筋を伝う冷たい汗。
まさか。
まさか。
まさか!
(ぺロッ)
(拡大写真)
風穴。
ひ
い
ぃ
ぃ
あ
あ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
ぁ
・
・
・
・
・
(心の中で泣きながら心肺停止)
何が起こったのかは、貸し部屋9号室連載中「ぼっくんドキュメント21」で見れ!
見て、共に泣いてくれ!!(ブラウザの”戻る”ボタンで帰って来てくださいね)
ぼっくんは既に石化状態です。
そりゃそーでしょう。例えるなら「預かっていた他人の御子様を怪我させてしまった保母さん」の心境のはずです。
TAC、この時すばやく「優しいお兄さんモード」、「寛大な兄貴モード」、「罪を憎んで人を肉まんモード」の全スイッチ・オン!
「わははは〜〜〜〜。なんだ、こーゆー事か。気にすな気にすな!よくある事だよ」
(よくあってたまるか)
「しかし見事に突き抜けたもんだな。はは。心配すんな!俺は板金屋やで?こんなモン簡単に治してやらあ」
(簡単に治るかい)
我が人生で、最も優しくなった瞬間です。
・・・これでGWの半分は潰れそうです・・・。
結論から言いますとね。
はい、治りました♪
ナメんじゃねーぜ、板金屋さんをよ!(鼻息)
手順としては、
(1) まず穴の縁に残ってるバリをベルトサンダーで削り落とし(この時、出来るだけ周りを傷付けぬよう細心の注意を払う)、穴を紙テープで塞ぐ。
(2) 車室内の天井に張ってあるビニールシートを患部の周りだけ四角く切り抜く。(裏から穴を確認)
(3) 裏から穴にしごき付けるように板金パテを盛る。
(4) パテが硬化したのを確認し、その周りを更にシーラント(乾燥すると固まる液状のゴム)で埋めて切り抜いたシートを元に戻す。
(5) 穴を塞いだ紙テープを剥がす。(パテの断面が見える)
(6) パテとその周辺をサンドペーパーで研ぎ、平らにする。さらにその一回り外周をコンパウンドで磨く。
(7) 通常ならここでサーフェーサという下塗り塗料を吹くのだが、ソレをやると患部が広がる(あとで描き足すエアブラシの領域が増える)ので割愛。小さな隙間を埋める速乾性のステップパテをしごき付け、もう一度研ぐ。
(8) 塗装開始。今回は幸運にも患部が鵺の胴の真っ白な部分だったので、周りに塗料が散らないよう注意深く白を吹く。(パテが見えなくなるまで)
(9) 周囲との色の差を無くすべく、エアブラシの黒で鵺の腰あたりを描き込んでいく。
(10) クリアー塗装。描いた部分をスッポリ覆うように丸く周りをボカす。
(11) 乾燥後、コンパウンドでポリッシング。完成。
なんとか一日で済ませました。
パッと見では絶対に判らないはずです。
もっとも裏から強引な圧力がかかったわけですから、よく見ると穴があった場所だけ微かに盛り上がってるのが判るんですけど。
ちなみに裏はぼっくんが用意してくれていたベニア板(壁紙貼り済み)を取り付けて作業個所を隠します。
今度こそ完璧です。