実践編
さあ、お客さんが来たよ!
わあ、いきなり凄いイカレイカしたバニングが来たね!
こんだけバリバリにヤリたい放題やってる車だと最初少し引いちゃったけど、ある意味こっちも開き直って作業できるからイイよね!
スムージングになってるハッチバックには「ジャンヌ・ダルク」っていうバンドメンバーのステッカーが貼ってあるよ。ファンなんだね。
今回の依頼は、彼らのアルバム「Another Story」のジャケットにあるファンタジー系イラストなんだって。
模写は苦手なんだけどなっ。
ここがエアブラシを入れる右側面のボディ。(→)
フロントドアやクォーターガラスに色がかかっちゃマズいから、まず最初にやるのはマスキングという作業だ。作業箇所以外のところを隠すワケだね。
こんな感じになる。
マスキングに使われるのは多くの場合、新聞紙。
専用のマスキングペーパーなんてのもあるんだけど、こういった古新聞などを積極的に使う事でリサイクル運動に貢献しているんだ。
決してお金をケチってるワケじゃないよ。貧乏というわけじゃないんだよ。何だその目は。自分が幸せならいいんだよ!
・・・でも、この頬を流れ落ちる熱いものは何?
マスキングが終わったら足付け処理だ。
車のボディのような硬い物に色を塗る場合、紙のように塗料が染み込んでくれないから表面にしっかり定着してくれるよう下準備をしなければいけないんだ。化粧前の
洗顔みたいなものかな?
足付けは「脱脂」と「サンディング」が一般的な方法。
塗装に油は天敵。だからまずシンナーなどの溶剤を染み込ませたウェス(ぼろきれ)で丹念に拭き、ワックスなどの油脂分を除去する。
作業前にフライドポテトなんか食べちゃダメだよ。もちろん汗っかきのデブも近づけてはならない。自分が汗っかきのデブな場合は・・・まあ、気合でなんとか乗り切ろう。
脱脂の後は#800〜1000くらいのサンドペーパーで水研ぎ。(→)
これによってボディの表面に細かい”傷”が付き、塗料のノリが良くなるんだ。
はっきり言って死ぬほどつまらん作業なんだけど、この足付けは絶対手を抜いてはいけないとても大切な行程なんだよ。
さあ、これで塗装の準備は整ったよ!
☆ワンポイント・アド ぶゎイス☆ この車のようなメタリック車には、例外なく表面にクリアーという透明な塗料の層がある。 安心して!
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・・・で、これが問題のDVDジャケットだ。
うわぁ、いきなり家に帰りたくなっちゃったよ!
青空の下にたたずむ少女とジジィ、ファイヤー・ドラゴン、氷の女王、赤い月、鏡の国、音の国・・・と、なんかやたらめったらいろんなもんが詰め込まれたイラストだね。
細かい絵は苦手なんだけどなっ。
とりあえずレイアウトを決める意味で、大きめの紙(マスキングペーパー)に軽くアタリを付けてみたよ。
オリジナルの絵を描く時は、ボクの場合ほとんど下描きなしでいきなりブラシを始める。
でも今回のような模写の場合は、できるだけ正確に原画を再現する為にも慎重に位置決めしとかないとね。
☆ワンポイント・アド ぶゎイス☆
付き合い始めの頃はとにかく夢中だった美女が、時間が経って熱も冷めた頃よく見てみたらガッツ石松が首くくったような顔だったってコト経験ないかな? ただ2、3日寝かせちゃうと、今度は自分のテンションの方が落ちちゃって制作意欲が激減するのは目に見えてるんだけどね☆
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位置決めが終わったら、”キャンバス”を作ろう。
絵を描くエリアに白を塗装するよ。
これは別に白である必要はない。完成図が全体的に黒っぽい絵なら、最初から下地を黒で塗っておいた方が近道である場合もあるよ。
でも覚えておいてね。
淡彩色の上に濃い色を乗せていくことは容易だけど、その逆は難しい事。
例えば黄色のような隠蔽性の低い(透明度が高い)色を黒の上に塗っても、下の黒が見えなくなるなるまで塗り込むのはなかなか苦労するよ。
ちなみにムラムラなのは決してやる気が無いんじゃなくて、このムラがこれから描き込む背景に与えるノスタルジックな効果を期待してるんだ。
もう戦いは始まってるんだよ。ホントかな。ホントだよ。
さあ、次のページからいよいよ「Another Story」を描いていくよ!