8月8日(日) AM8:07 『もう一つのミステリーツアー』
明け方。
大地を揺さぶる轟音で目覚める。ななななななななんだ家鳴りかうわんか貝吹き坊か虚空太鼓か?!?!
敏太郎さんの鼾だった。
さすが妖怪王。
周りの皆はそろそろ起き始めている。TACもZou−さんとフジコをホテルまで迎えに行かなければならないので仕方なしに起きる。
どうやら他の皆は午前3時くらいまで飲み明かし、そのまま雑魚寝になったらしい。太郎坊さんの美容室には鏡の前に設置された電動リクライニング椅子が4つほどあるのだが、足元のペダル(椅子を上下させるスイッチ)を枕に寝ていたカメカワさんがその上で寝返りをうつ度に椅子の上で寝ていたヒロさんがモーター音と共に上下するというなかなか面白い光景が展開されたそうだ。見たかった。
今日は八日市ほない会主催のミステリーツアーがあるのだが、我々はけふへゐくんが企画してくれたもう一つのミステリーツアーに参加する。滋賀に伝わる妖怪・怪談の名所を案内してくれるそうだ。楽しみである。いいのか百鬼夜号でそんなトコ行って。
あーりんさんが昨日ゲットした賞金を仮装者全員に分配してくれた。一人アタマ2000円の商品券。これは後日、ソッコーで母親と妹に没収された。俺がナニをした。
ホテルからZou−さんとフジコを回収。
別件の用事で欠席となった刃ちゃんを除く昨日のメンバー総勢16名が集合したところで、いざ出発!
百鬼夜号を含む車4台と、冥帝さんが駆るバイクに分乗して最初の目的地「長久寺」へと向かう。
この日も滋賀は抜けるよーな青空。当然日差しも情け容赦ない暑さ。百鬼夜号はさしずめ走る蒸し風呂である。
他にクーラーがバリバリ効いてる車が何台もあるというのに、わざわざこのクソ暑い百鬼夜号に同乗しているZou−さんとフジコ。早くも死ぬほど後悔しているだろうと思われる。
運転中、何か違和感を覚えた。フワフワとした感覚。
「ねえ、俺・・・なんか揺れてない?」
「揺れてるねぇ。ふわふわ」
気のせいではなさそうだ。
走っているうちに、どうやら運転席のシートがグラグラと不安定である事に気づく。
「ボルトが緩んでるんじゃない?」
「はははは、バカを言うな。いくらオンボロだからってまさかそんなことは・・・」(ごそごそ)←シート下部のレール取り付け部を探る
揺るんでるどころか抜けてました。
・・・・・しっかりしてくれよ「座席わらし」・・・・・(妖怪リスト参照)
8月8日(日) AM10:57 『お菊さんはカーペンターズがお好き?』
お隣の彦根市まで一気に移動。普門山長久寺に到着。
民家の間の狭〜い道を奥まで進んだ突き当たりにそれはあった。ここはなんと、あの「番町皿屋敷」のお菊さんの墓と、例の皿が保存されているというのだ。こりゃ大変だ。
改装中なのか、ビニールシートで覆われた鐘衝きの櫓。その左隣に山の斜面を埋めるかのごとく林立する墓標群。
写真矢印のホームベース型の墓石がお菊さんの墓である。かつては別の場所にあったのを移転させたものらしい。
彼女は彦根藩士・孕石家に奉公する足軽の娘だったそうな。
実は「皿屋敷」の伝説は全国にたんとある。我らが知る有名な「皿屋敷」は、高価な皿をあやまって割ってしまったゆえに斬殺され、井戸に投げ捨てられた哀れな女中が怨霊となって現われるどっから見てもリッパな”怪談”だが、この長久寺に伝わるのは身分の違いゆえに哀れな結末を迎えた悲恋の物語である。
孕石家の世継である政之進と女中お菊は相思相愛の仲。しかし政之進には亡き親の決めた許婚との結婚が迫っていたためお菊の心中は穏やかではない。ついに思い余った彼女は政之進の本心を確かめるため、孕石家に代々伝わる家宝の皿十枚のうち一枚を故意に割ってしまう。
過って割ったのなら彼女を強く諌めるつもりなどなかった政之進だが、真相を知るや自分の心を疑われた事に憤怒。お菊の目前で自ら残り九枚を刀の柄で打ち割り、悔しさのあまりその場でお菊をも手打ちにした。
過って割ったんでもなければ、井戸にも放り込まれてもいない。
ただ若気の至りで少々やり過ぎた感のある二人の、悲しくも壮絶な失恋話だった。
お寺の方に案内され、本堂に入る。
御本尊の千手観音の前で合掌。このときTACが心の中で念仏のように唱えていた事・・・
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいお菊さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいこんな絵描いちゃってますけどごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい悪気はないんですごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいでも結構巨乳に描いときましたからごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい自分でも割とエロチックに描けたと気に入ってるんですけどああああ冗談です今の冗談ですごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・・・
ナムナム(-人-;)ナムナム
そしてココでとうとう件の皿と御対面!
模様に見えるのは割れた皿を修復した跡である。
・・・・・・・・・・・・・あれ?
いちま〜〜〜い、に〜〜ま〜〜〜い、さんま〜〜〜〜い、よんま〜〜〜〜〜〜い、ごま〜〜〜〜〜〜〜い、ろくま〜〜〜〜〜〜〜い・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
四枚も足りなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い・・・(本気で祟られるぞキサマ)
どうやらあちこちに貸し出されてる間に盗難にあった模様。
「奥方供養寄進帳」なるものも見せて頂いた。
一目で年代モノとわかる桐の箱の中に大切に保管されていたそれは、お菊さんの死を哀れんだ彦根屋敷と江戸の三屋敷の奥方女中が彼女の供養法要をいとなんだ時の寄進帳で、実に292人もの名が記されている。
後に神霊カウンセラーのあーりんさん曰く、「あそこではいろいろ感じたけどあの寄進帳を見せられたときが正直一番キツかったわ。ああいった人の強い”想い”が込められたものは特に体にクルんよ。他のがニセモノだったとしても多分アレだけはホンモノやと思う」
と、口当たりマイルドに問題発言。
しかし彼女の言葉だけにリアルだった。
帰り際、部屋の脇にエレクトーンが置いてあるのに気付く。和室の中で見るそれは森の中で聞くプリンターのコピー音なみに違和感がある。
教会のパイプオルガンよろしく、この寺でも月一のミサに賛美歌でも唄うのか知らん・・・と、おもむろに伏せてあった楽譜をめくってみるとそれは、
カーペンターズ「Top
of the World」
・・・・・なかなかイイ趣味だ、お菊さん。
その後、お菊さんの生家があったとされる場所を通り過ぎ、行き着いたファミレスで昼食を摂る。
相席となったあーりんさん夫妻に大変面白いキャラショーの裏話を聞かせて貰いながらハンバーグ定食を食った。
・・・ちなみにヒロさん的「二度と演りたくないキャラ」はSDガ●ダムだそうな。(小さな神輿を肩に乗せてる感じらしい)
8月8日(日) PM13:05 『涼しそーな名前のちっとも涼しくない寺』
次に向かったのはかつて石田三成の居城があったことで知られる佐和山の麓、「清涼寺」。
井伊直弼が参禅修行した道場、そして井伊家代々の墓所としても有名な古刹であるがんなこたどーでもいい。
ここは「七不思議」の言い伝えが残る、とてもオイシイ怪異スポットでもあるのだ。
正面の表門は別名「唸り門」と呼ばれている。大晦日の晩には風もないのに低く唸り続けたというなかなか近所メイワクな門だ。
安永五年に焼失し、現在あるのは再建されたもの。それ以来唸らなくなったという。
そうか。イビキのうるさいヤツは燃やせばイイのか。
門の左手にある墓所の隅には、かつて「血の池」があったという。
落城の際に惨殺された人々の血が山麓を伝って流れ込み、真っ赤に染まったのだそうな。それ以来、血みどろの女の顔が水面に映るという。
そういえばTACの家の便所にも血の池の伝説が・・・(それはきっとただの痔だ)
本堂前の広い庭には、「木娘」に化けるという樹齢数百年のタブの木と、「左近の南天」がある。
関係ないが、TACは「木娘」より「生娘」の方が好きだ。
「左近の南天」は石田三成の家臣・島左近が愛した南天の木で、とても喉にイイらしい触れた者は腹痛を起こすと言われる。
果敢にもカメカワさんが試しに触ってみたが、異常はなかった。電車の中で女の尻を触った方が確率は高そうだ。(ボディーブローを喰らって)
すっかり日干しなフジコ
本堂の裏手にまわると、高台に作られた墓地へと続く坂がある。
その坂を登りきったところにあるのが「洗濯井戸」と呼ばれる井戸である。その水はかつて左近が茶道に愛用し、一晩浸けて置けばどんな汚れ物でも真っ白になったという。つか、汚れ物を浸けた水で茶を淹れたのか左近。
他のに比べたら随分実用的でありがたい怪異だ。オースマン・サンコンでも美白できるか試したい。
ここでは敏太郎さんらを中心に活発な論議が展開された。
この井戸のある場所から、本堂の裏にあるもう一つの池が見下ろせる。実はこっちの池こそが本当の「血の池」なのではないか?山を伝って血が流れ込んだという話が本当なら、位置的にはこっちの池の方が理にかなっている・・・など、大胆な仮説も出たりした。
一方そんな高レベルな妖怪論議が交わされているすぐ脇で、井戸に設置されたポンプのメーカー名を見たTACは「なるほど。ようするにこの洗濯井戸はHIT●CHI製の食器洗い機なのだな」と大バカな仮説を立てていた。いっぺんここの水でアタマ冷やせ。
その他にも、ひとりでに鳴る「本堂の太鼓」、何度塗り替えても浮き上がる「壁の月」、虫干ししていた戦利品を強風で一気に巻き上げてさらっていった「佐和山の黒雲」、書院の手水鉢に突然現れて水を汲んでくれる「小姓」の話など・・・この清涼寺はどうやらポルターガイストの巣窟であったらしい。
そして何より一番の謎は「七不思議」という割には何故か九つあることであろう。
ここで、はるさん夫妻がお帰りになった。
また妖怪王さんと冥帝さんもそろそろ帰途につかねばならない時間らしい。お疲れ様でやんした!
一旦オバケの美容室まで戻る。
ここでお二人を見送った後、少し休憩して再び発つ。
次の行き先は、オバケの美容室からそんなに離れていない八日市の名所なのだ。
8月8日(日) PM15:09 『天狗が統べし奇岩の要塞』
赤神山。標高350m。
蒲生野の空にそびえる異形の霊山。
その中腹にあるのが阿賀神社。通称「太郎坊宮」である。
京都鞍馬の次郎坊天狗の兄、太郎坊天狗が守護していたと伝えられる。勝運授福の御利益があるらしい。
のろい観光バスの後ろを百鬼夜号でアオリながら坂を延々と登り、参集殿前の駐車場に到着。(このバスが実は”本家”八日市ミステリーツアーの御一行だったことを後で知る)
ここから本殿までは長い石段を登っていくことになるのだが・・・・
おい。
ぬわんじゃコルァ!!
・・・・・740段あるらしい。
TACの母にこんな階段のぼらせたら途中で軽く二泊はするぞ。
しかしこの神社・・・・・なんかやたらカッコイイ。まさに天然の砦なのだ。
天狗が棲んでいた場所にふさわしく、複雑に入り組んだ岩山の中に無理矢理造られている感じが実に微笑ましい。あちこちに露出した様々な形の巨岩・奇岩も荘厳な迫力を感じる。
中でも本殿前の「夫婦岩」と呼ばれる場所は、高さ数十メートルの岩山が裂けた間に出来た狭い通路でその幅はわずか80センチ。距離は12メートルもあり、ここを抜ける間は確かに押し潰されそうな錯覚に陥り知らず早足になる。
嘘つきな人間は途中で挟まれるそうだ。日本版「真実の口」である。
・・・いやちょっと待て、つまりナニかデブは問答無用で「嘘つき」か。
無事参拝を済まし、百鬼夜号用に交通安全のステッカーも買った。
ここからの眺めは実に絶景だった。