Project Millennium Forest
〜”千年の森”計画〜


 

水木ロード◎コム閉鎖。

ほとんど予告もなく、ある日突然それは告げられた。衝撃が日本列島を襲った。北は北海道から南は青森まで。意外と狭い。
「スポンサーの方針変更に伴い、」の部分から察するに、何かあったのか無かったのかと言えばあったのだろうが、まあその件については深く触れない。←触れてる
まあ、長くやってればいろいろあるということだろう。

で、職を失った(こらこら)目玉マスターや入道さんらが一体次は何をおっぱじめるのかと思ってたら、なんと新しいサイトどころか新しい会社をおっぱじめていた。ホントに妖怪の方々ってやることがイチイチ予測不能だ。

その会社の名は「(株)千年王国」
水木ロードから全国に向けて妖怪をテーマにした「何か面白いもの」を発信していこうというまちづくり秘密結社である。社長は「ゲゲゲのしげる会」会長をも務める高橋さん。バカボンパパに似ているがとても本人の前では言えない。←言っちゃってる

実はこの会社が2005年8月、水木ロードの名所「鬼太郎茶屋」隣に新規に店をオープンした。


「水木しげる文庫」


その名の通り、水木しげる及び妖怪関連の書籍の他、妖怪グッズなども幅広いラインナップで揃えている本屋さんである。
もちろん、水木プロも全面バックアップだ。

 (撮影 SYOさん

店内にはゆったりとくつろげる喫茶スペースが設けてあり、ドリンクのテイクアウトも可能。

  

インターネットも絡めた一般参加型企画も予定されており、まさしく水木ロードの新しい名所の誕生である。

 

 

 

 

 

そして。

この店の奥には謎のエリアが。
後に「水木ロード大作戦」と呼ばれるイベントの発信拠点となる「千年の森」がある。

森をイメージして作られたその空間は、その殆どがマスターと入道さんらの手作りによるもので、完成に至るまでそれはそれは苦難と葛藤の連続であった。
そしてこの不肖TACも、その製作に一役買っていたのである。

一週間の鳥取出張エアブラシ。

 

 

 

これは・・・ある過酷な夏の日々を共に生きた男たちの、熱く、そして暑くるしい戦いの記録である。(大袈裟である)

 

 

 



最初にこの仕事の依頼があったのは半年くらい前だったと思う。
「店の外壁と内壁に妖怪の絵を描いてください」・・・・・・醤油を貸してくれ級の気軽さだった。
総面積がどれくらいなのかわからないが、車のボンネット一枚分の絵だけでも数万円だというのに一体彼らはどれくらいの予算で考えているのだろう?それとも金が唸るほどあるのだろうか?

後日マスターから、店内のイメージ画像が送付されてきた。

店の奥の、木に囲まれたスペース・・・赤い矢印で示された三方の壁に「森」を描いて欲しいらしい。で、木々の陰に隠れるようにして妖怪を数体入れて欲しいとのこと。
ちなみに画像にある二本の巨木はマスターと入道さんが自分たちでハリボテ製作するそうな。こうやって浮かそうとするあたり、やはり金は唸るほど無い模様。面積にしてボンネット何枚分だ?・・・と計算しようとしたが止めた。

その後、何回かのメールのやり取りの末、外壁は予算的にも時間的にも、そして何より環境的に大変無理があると判断。(凸凹な上にガスメーターやらなんやらいっぱい邪魔なモンが付いている)
依頼は「内壁のみ」「緑を基調にしたモノクロ画」に絞られ、制作期間を一週間くらいという目安でスケジュールを組むことにした。

 

しかしこの一週間という期間が妥当であるかどうかは正直不安だった。
内壁だけになったとはいえ、面積にして約m×m・・・文句なしで我が生涯最大 規模の作品となる。百鬼夜号なんかメじゃない。ちゃんと期間中に完成するだろうか?
見積金額、使用する塗料の必要量や壁の材質との相性など、実際に現場を見るまでは予測しにくい要素もいくつかあった。それでもマスターはメールで返事をセカしてくる。

何より肝心な問題はその「一週間」がいつなのか。
工事は予定より遅れており、我らが作業に取り掛かれるタイミング(おそらく7月中旬以降)と、こちらの会社とのスケジュール調整が難しかった。それでもやっぱりマスターはメールでセカしてくるのである。

 



日時決定。
境港へ出張期間・・・7月17日(日)〜24日(日)の8日間。

この週は18日(月)が「海の日」、23日(土)が我社の定休日(第四土曜日)なので実質平日は中4日しかない。これなら会社に迷惑をかけるのも最小限で済む上に、代金も勉強してあげられる。その4日間以外の作業はボランティア扱いにすればいいのだ。誰も言ってくれんから自分で言うけど本当になんてステキな ヤツなんだろう俺ってば。
一応「正式な仕事」の体面を取ってはいるが、やはりなんといっても今回は依頼相手が大恩人ですから。
恩返しのつもりで儲けナシでやらせて頂きますよダンナ!・・・親父ゴメン(T_T)

 

・・・ちなみに狙ったわけではなかったが、この期間の境港には新ブロンズ像の入魂式の為に水木センセが 来てたり、映画「妖怪大戦争」のプロモ撮影に主人公役の神木少年が来てたり、しかも週末は「みなと祭り」だったりとなんともグッドタイミングな一週間だったがしかしあくまで偶然だ。決して狙ったわけじゃない。(清々しいほどに説得力0)

 

 

 

また奇しくも35歳の誕生日(19日)を水木ロードで迎えることになった。
そのため、遠距離恋愛中のカノジョが16〜18日の連休を利用して一緒に境港までついて来てくれることになった。嬉しい。
21日には福山妖怪軍団のクマちゃん・DACK2姐さんが浴衣で遊びに来てくれることになった。これも嬉しい。
23日にはSYOさん邪魔をしに応援に駆けつけてくれるそうな。・・・まあ、そこそこ嬉しい。←(ヲイ)

ぃよっし!
カノジョもいることだし、 仕事は月曜からということにして初日はロードでデートでもしよう。
早めに仕事上げて、最終日はみなと祭りを愉しもう。

いや〜俄然楽しみになってまいりました境港旅行!!
(仕事 だっつの)

 


 



16日(土) 出発

 

今回は百鬼夜号で行くのを最初から断念していた。

コンプレッサーなどのエアブラシ用品一式と、十分な量の塗料・シンナー。これだけでも結構なお荷物だが、さすがに一週間の滞在となると持っていく服や下着の替えもバカにならない量である。(途中で洗濯する気 は全くないらしい
限界にまで圧縮封入された衣類のバッグ。百鬼夜号に載せて行くのは無理だ。

 

・・・というのはタテマエで。

 

あのオンボロ車で無事に鳥取まで辿り着けるかどうか普通に不安。

 

・・・と、いうのも実はタテマエで。

 

ホンネは、このクソ暑い時期にクーラー無しで生きていけるか バーロゥ!!
・・・だったりする。(百鬼夜号はクーラー封印中)←多分、永遠に。

 

と言うわけで会社のスプリンター・バンを借りる。荷物も十分積み込 めるし、クーラー付きで、なによりAT車だ。文明の利器万歳。
早々に仕事を切り上げ、自宅で身支度をしてから夕刻に出発。既に昼には名古屋入りしているカノジョと合流すべく、岐阜駅まで迎えに行く。

 

 

名鉄岐阜駅かと思えばJR岐阜駅だったり、JR岐阜駅に着けばバス専用ロータリーに迷い込んでオッサンに注意されたりと、出発早々からホントいらんプチネタに事欠かない TACさん。
やっとこカノジョを拾い、コンビニで飲食物など仕入れてから、関ヶ原ICより名神高速へ入ったのは20時前後だっただろうか。全ては順調だった。・・・たった一つの例外を除いて。
暑い。

 

クーラー?ええ、付いてますよモチロン。
ちゃんと効きますよ?スイッチさえ入れれば。
実は。

 

塗料を詰め込んだダンボールはガムテープで出来るだけ念入りに封印したつもりだったが、それでもかすかに漏れているらしい。
ともすればすぐ車内に充満するシンナー臭。これでは窓を密閉できない。運転中に別の意味でトリップするハメになる。
しかも・・・

実はカノジョ、この時ちょっとお腹の調子が悪かったらしく、クーラーで更に身体が冷えるのを嫌った。

つまり鳥取への道中ずっと、スプリンターは窓全開。ほとんどクーラーを使う事はなかった。
何のためにわざわざこの車を手配したのかわからん。
( ̄^ ̄°)

 

 

 

カノジョは車の助手席に座ると瞬く間に眠りに落ちるという、赤ん坊のような習性がある。
今回も当然それは想定していた。コンビニで買ったエサを与えてる間はなんとか覚醒しているようだがまあ永くはもつまい。
彼女なりに気を遣ってるのか、起きてる間は様々なネタ話を提供して楽しませてくれた。

カノジョ
「喉に魚の骨が刺さるってコトよくあるじゃん?昔ね、私も焼き魚食べてた時に刺さっちゃったコトがあったのね」

TAC
「ああ、アレは痛いよな」

カノジョ
「鏡で覗いて見たら、扁桃腺の上下に2本も刺さってんの。もうビックリ」

TAC
(・・・がっつき過ぎだ)←心の声

カノジョ
「ゴハン丸呑みすれば取れるって言うじゃんねぇ?だから私もそれやったんだけどナカナカ取れなくて」

TAC
(がっつき過ぎだ)←心の声

カノジョ
「そのうちゴハンだけでお腹いっぱいになっちゃって

TAC
(がっつき過ぎだって)←心の声

カノジョ
「しょうがないからピンセットで引っ張ってみたら、もう片方が引っ込むの。貫通してたの。ビックリ。」

TAC
「がっつき過ぎじゃあ〜!」←実声

 

 

 

 

・・・カノジョは「自分でタイヤ交換しようとして車庫の2階から両脇にタイヤ抱えたまま階段をズリ落ち、ケツに近年稀にみる見事な青痣が出来たとか、「冬に凍ったシャッターを引き上げようとして生爪剥がしちゃったとか、「会社で派手に転んでコピー機のトレーを肘で撃破など、嫁入り前の若い娘としてそれはどうよな生傷絶えぬ話題に尽きない。

 

そんなカノジョとの付き合いは、そろそろちょうど一年になる。

 

 

 

 

22時。さすがに眠くなってきたのか、カノジョが欠伸をする。
悪ふざけで開いたその口に指を突っ込んでやる。その刹那、急に背筋に冷たいものを感じて急いで指を引き抜く。
次の瞬間、ガチンッ!!と、金属音にも似た容赦無い咬合音を響かせて閉じられる口。

TAC
(冷や汗)・・・今、あんたマジだったろ・・・」

カノジョ
「次やったら、遠慮なく噛み千切る

 

 

・・・そんなカノジョが睡魔との激闘の末見事撃沈し、隣が静かになった頃。車は神戸を抜けようとしていた。
吹田JCTで中国道に入らなきゃいけない所をうっかり直進し、急遽神戸淡路鳴門道経由で神戸に戻ろうとするも再び入り口間違えて第二神明道路にまで入ってしまい、軽く80kmほど遠回りしてしまった事はココだけの秘密だが、ドライブそのものは順調だった。(そういうのは順調と言わん)
基本的に高速一本道であるはずの境港行(しかも2回目)ですら発揮されるTACさんの方向音痴は、もはや神の領域と言えよう。
ま、時間は死ぬほど余裕あるし、同行者はしっかり爆睡中なので関係無いがな。

 

・・・そう。時間はちょっと困るほどにメチャクチャ余裕あった。

前回の境港行では到着予定を正午とし、それでも十分な余裕をとって午前3時に美濃を発っていた。
今回も同じ正午着予定なのだが、カノジョとの合流があったため出発はさらに6時間ほど早めである。宿は日曜夜からしかとってないので今夜はどこかのSAで車中泊のつもりだが、仮眠どころかマジ寝が可能だ。どこで寝よう?

「・・・ま、疲れたら停まろう。それまで行けるトコまで行ってみるか

 

 

 

 

そう思ったTACさんが行けるトコまで行って結局停まったところは、鳥取県・米子自動車道「蒜山高原SA」午前2時。
行程を一年に例えた場合、クリスマスまでを一気に走破してしまった。前回の出発時間よりも早くに。←アホ

こんなに早く着いてしまってどーすんの。ホント時間配分がテキトーな奴である。我ながら。
しょうがない。ココで朝まで寝るとしよう。

 



この時、予想してなかった雨が降っていた。
窓を閉めたいのにそれをやるとシンナーが香るジレンマ。ちょっと寝づらい。
トイレに行ったついでに自販機でお茶と、何を血迷ったか塩ラーメン(注:ド深夜です)なぞ購入し、車に戻ると彼女が起きていた。

TAC
「Hey,彼女。俺らと一緒にラーメンでもしばかへん?」

カノジョ
「ラーメンしばくー☆」

・・・どんな会話だ。

 

 

 

駐車場の濡れた地面に外灯の光が反射してちょっと幻想的だ。
幻想的だが、眩しくて寝られん。

カノジョ
「あ、そうだ。誕生日プレゼント買ってきたの」


大きな紙袋から取り出されたそれは、なんと浴衣だった。

しかも骸骨柄。判ってる。この子ホントよく判ってる。


TAC
「あ・・・ありがとう。嬉しいよ」

カノジョ
「帯も4本付いてるよ。なかなかイイでしょ」

TAC
「すげ・・・高かったろ、コレ」

カノジョ
「奮発したもん。ほとんど衝動買い

TAC
「君も浴衣持って来てるんだろ?」

カノジョ
「うん。明日はロードで浴衣デートできるね」

TAC
「あ・・・君、オトコ用の帯の結び方、知ってる?」

カノジョ
「知らないよ。・・・TACさんは?」

TAC
「・・・・・」

カノジョ
「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

・・・・・明日はとりあえずどっかの本屋でレシピを捜すことになりそうだ。(着付けの)

でも・・・本当に来て良かった境港旅行。
(だから仕事 だっつの)

 

 

 

 

 

 

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