The Final mission
〜百鬼夜号・最後の遠征〜


2006年9月16日PM4:00 TAC家

 

仕事を15時に上がり、帰宅。
風呂に入り、そそくさと身支度し、荷物を百鬼夜号に積み込む。
エンジン始動。
そう、これからTACは百鬼夜号で旅に出る。

ここ最近の遠征では、もっぱら百鬼夜号は積載車に載せて行くのが主流になっていた。しかし。
今回は最初から百鬼夜号に乗って出発する。そうでなくては意味がないのだ。

・・・これは「最後の遠征」だ。
この旅をもって、とりあえずこの「妖怪百鬼夜号計画」という長い物語に一区切りつける。
つまり、事実上の最終章なのだ。


これから向かう場所は、文句ナシに今までの中でもブッチ切りの最遠隔地。
その地に、TACの人生最大ともいえるミッションが待っている。まさに最終章に相応しいミッションが。
だから行かねばならない。百鬼夜号で行かねばならない。
そうでなくては意味がないのだから。

「ぃよっし!・・・行くか、百鬼夜号」
ハンドルを握り、アクセルをゆっくり踏み込む。今回はちょっと遠いが、頑張ってくれよ。

 

――――百の鬼が今、かの地へと向けて動き出す。

 

 

 

 

 

PM6:30 名古屋港フェリー埠頭

 

 

今回の行程は複雑である。
仕事の都合や休日、そして先方の予定、使用便の出発時間など・・・様々な要素を照らし合わせた結果、行きと帰りは全く別ルートとなった。
行きは一日半もかかる。しかし現地滞在時間はせいぜい半日だ。
かつて例のない、トンボ帰りの強行軍である。

とりあえず最初の経由地、名古屋港に着いた。
ここからフェリーに乗船する。百鬼夜号、初の船旅である。

 

太平洋フェリー「きたかみ」

 

出航は20時。
フェリーターミナルで乗船手続きを済ませ、夕飯にラーメンを食っていると、車両乗り入れ案内のアナウンスが流れた。

他の車と共に列に並び、百鬼夜号を車両甲板に乗り入れる。
誘導係のクルーのお兄さんが「この車、スゴイっすねえ!!」と驚いていた。
大事な相棒なんだ。大切に送り届けてくれよ。

TACも船内へと乗船する。
案内された客室は、定員12名の2段ベッドが並ぶ二等寝台だ。
明日は丸一日海の上である。その殆どを、ここで寝て過ごすことになりそうだ。

 

 

 

 

汽笛が響き渡った。

さあ、出航だ。

 

 


PM8:15 「きたかみ」船内

 


目的地着予定は明後日の昼前。つまりこの船の上で二泊する。
フェリーに乗った事は今までにも数回あるが、宿泊は初体験。海ナシ県民であるTACにとって、「船酔いで眠れなかったらどうしよう」などの心配は尽きなかったが思ったほど揺れなかった。
エンジンの振動はずっと感じるが、気になるほどでもない。

ちょっと船内を探検してみる。

 

 


予想より遥かにゴージャスな作り。ホテルとなんら変わらない。
レストランやバーはもちろん、他にもシアター、ゲームセンター、麻雀ルームなどの娯楽施設も揃ってる。これらはTACの宿泊する部屋のすぐ近くなのだ。二等寝台のくせに立地条件は一等地である。
・・・まあ、利用する予定は今のところ無いわけだが。

 

サウナ・ジャグジー付き展望大浴場で一風呂浴びる。
その後は土産売り場で缶ビールとホタテ貝柱などを買い込む。(ジジくさ)
吹き抜けホールから流れてくるジャズの生演奏をBGMに聴きながら、ベッドでビールを飲みつつマンガを読む。
今夜はこのまま寝てしまおう。

 

一人旅だからちょっと寂しいけど、これはこれで結構ゼイタクな時間。

 

 

 


9月17日AM9:00 太平洋上

 

おあよーございまふ・・・。
巨大なゆりかごに揺られ、昨夜はよく眠れまいた。

TACの清々しい目覚めとは裏腹に、本日の太平洋の天気は超くもり。南南東の風。風力5。(テキトー)
とにかく風が強い。デッキでは立っていられないほどです。

 

朝食はバイキング形式。
大抵いつも同じよーなモンばかり選んでしまうのな。

 

 

 

 

ベッドでマンガばかり読んでるのにも飽きてきたので船内をブラつく。

大窓が並ぶ通路の脇に設置されたテーブル席の一つに陣取り、鼠色の海を眺めながら携帯を弄っていると、すぐ隣の席に座っていた老婦人が話しかけてきた。
オシャレな帽子に銀縁のメガネ。一見してお金持ちとわかる上品な風貌。手にした小説も英語版である。
心の中で勝手に「ミズ・マープル」と命名する。

マープル婦人
「お一人ですか?」
TAC
「ええ。・・・そちらは?」
マープル婦人
「主人と一緒に。今は部屋で寝てるようですけど」

TAC
「夫婦で御旅行ですか。いいですね。ちょっと天気が残念ですけど」
マープル婦人
「そうですねぇ。そちらは一人旅ですの?」
TAC
「いや、ちょっと大事な用事がありましてね」
マープル婦人
「まあ、大事な用事?」
TAC
「でも内容は聞かないほうがいいです。聞いたら多分、この船沈みますよ(笑)
マープル婦人

「えぇ?」
TAC
「映画でよくあるパターンなんですよ。ちょっとイイ話なんですけどね、 これを誰かに打ち明けたキャストって、大抵それが叶わずにクライマックスで死ぬんです」
マープル婦人
「あらあら、それは大変(笑)。でも、健闘をお祈りしますわ」
TAC
「ありがとうございます」

 

・・・・・彼女は何かを察したようだった。
優しく微笑んでそれからは何も言わなかった。

 


 

 

 

 

 

昼食はカレーバイキング。
真昼間から生ビールかっ食らうこの贅沢。たまんないね!

 


PM5:34 仙台入港

天候は相変わらず芳しくない。
つか、ずっと小雨が続いている。

目的地が徐々に近付き、ミッションへの期待や不安が高まっていく。
こんな気の滅入る空の下では、不安ばかりがどんどん加速されていく。

でももう後戻りは出来ないんだ。海の上だし。
百鬼夜号と共に船に乗っちゃったわけだし。

 

 

 

そうこうしてるうちに、「きたかみ」は仙台港フェリー埠頭へと入港を果たした。

 

 

よっしゃあ!百鬼夜号、仙台初上陸だ!

目的地まで一気に飛ばすぜ!!

 

仙台と言ったら牛タン!笹かま!ずんだ餅!
何を食おうか迷うぜ!

いぃいぃぃやっほおおおぉう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・と言うのは大嘘で。

 

はい、すびばせん。

ちゃんとフェリーに戻って夕食喰らってます。さっきの仙台写真は途中停泊地の一時下船ですた☆
このためにわざわざ下船して、小雨降る中わざわざ道路まで出て、写真撮ってる俺ってバカ。下唇噛んでヴァカ。

 

 

そう、フェリーは仙台を経由して。

今度こそ本当の最終目的地である北の大地に向けて再出航しました。
もう戻れません。(ずっと既に戻れません)

 


PM10:45 東北沖合

 


明日の昼前には着港である。
暇つぶし用に持参していた桜玉吉「しあわせのかたち」「幽玄漫玉日記」全巻読破してしまったし、今夜もさっさと風呂に入って早々に寝てしまおうと思う。

実は行きの行程ではこの辺りが一番海が荒れていた。
大浴場も、自然に寄せては返す津波状態。浴槽内に普通に座ってるだけで、右へ左へと押し流されて何度も沈んだ。
床に落とした石鹸が遥か向こうまで滑って行ってしまうが、待っていれば自然に足元まで戻ってくる(笑)。

なかなか面白い経験をさせてもらった。

 

 

 

 

 

・・・さあ、明日はとうとうXデーである!

 

 

 

 

 

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