西日本百鬼夜紀行 (その1)
さて、PM2:20に意気揚揚と工場を出発し、とりあえず地元の「美濃IC」から東海北陸道に入ったのはイイけど、ホントどこ行こう?
時は12月下旬。クリスマスイヴイヴイヴ。つまり雪がいつ降ってもおかしくない季節。
これ以上北に行くのは憚られる。だってタイヤ、ノーマルだもん。
一応”京都方面”という事でとりあえず進路は西にとったものの、さして観光目的があるワケでもなし。
しばらくは、ただひたすら道なりに走る事にしよう。
一宮JCTから名神高速に入り、米原JCTを抜け京都を目指す。
出発した時点で既に半分くらいだった百鬼夜号のガソリンが尽きかけたので、給油の為最初に停まったのは京都の一歩手前、大津だった。
大津サービスエリア | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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駐車場に入った時点で既に重圧的な衆目の洗礼に晒される。
考えてみれば、百鬼夜号が愛知・三重より西のエリアに出たのは初めての事。周りの誰もが皆、この異形の車と遭遇するのは初めてのはず。ああ、今更ながらワタシってばなんて悪趣味な車に乗って来ちゃったのかしら。(気付くの激遅)
そそくさと逃げるように店舗内に入り、食事を済ます。
テキトーな土産物を買い、店を出ると・・・なんか向こうの方に人だかりが。ああ。
ええ、ええ、知りたきゃ書きますが百鬼夜号が停まってるあたりですよ。当然ですけどね。
そそくさと逃げるように大津を出発。
さて困った。まだ5時前だというのに、このままではもう京都に着いてしまうぞ。
神社仏閣を巡り、どっかのホテルに落ち付くつもりなら良いタイミングだが、そんなのが目的の一人旅じゃない。
この旅の意義はただ一つ。百鬼夜号と、ただ走る。それのみ。
よし、目的地神戸に変更。
あっさりと京都を通過し、吹田JCTより中国道に入る。
西宮名塩サービスエリア | |||||||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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基本的に出不精のTACは、一人きりという慣れない状況も手伝ってか、この時点でずいぶん遠くに来ちゃってる気分になってます。地図上ではまだせいぜい5cmくらいしか移動してないのにイイ気なもんです。
100km/hを超えると起こる軽自動車特有の分解しそうな振動や、抜いていく車の助手席ガラスに顔を押し付けるようにして送られてくる熱視線にもようやく麻痺慣れてきた頃、百鬼夜号は神戸JCTを通過。山陽道に入りました。
しかしここでまた浮気グセが発動。
地図を見てみたら「あら?こんな近くに淡路島があるじゃない」と、急遽路線変更。
三木JCTで神戸淡路鳴門道に入り、明石海峡大橋を目指します。
淡路サービスエリア | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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ええ、本当に綺麗でした。夜景。
橋を渡ってる時に見える街の灯りもそうですが、ここのSAにある「橋の見える丘」という展望スペースから見た明石海峡大橋のライトアップは素晴らしいですよホント。
寒さも忘れて見入ってしまいます。
こういう場所には必ず出没するといわれる「ベッタリまったりインナーワールド埋没型カップル」も御約束のよーにいました。ええ、そりゃもう、たくさん。佃煮にして売りたいほどに。
クリスマスの夜なんか、もっと集まるんでしょうね、ココには。
あまりにもムナクソ悪くなったので、百鬼夜号からのささやかな呪いとして屁を一発かまして早々に引き上げました。
さすが明石 | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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タコヤキ旨かったです。あまりに柔らか過ぎて爪楊枝では持ち上げられないですけど。
ぶたまんも旨かったです。あまりに熱過ぎて舌を焼き、後半ほとんど味を楽しめませんでしたが。
連休中だという事もあり、この時間はまだまだ観光客がとても多いです。
駐車場で車中仮眠をとっている間、脇を通り過ぎる人々の反応がイヤでも耳に入ってきます。
「わあ、凄い!」と歓声を上げる御子様。(うんうん♪)
「こりゃあ、凝ってるなあ。金かかっとるわ」と感嘆する御老人。(ありがとう。自分で描いたから金かかってないけど)
「うげっ。気持ち悪い。アホちゃう」と直球なリアクションをくださった、どー見ても不倫だろおまえらカップル。(笑呪)
思わずギア入れて後ろから轢いて差し上げようかと思いました。
そそくさと逃げるように出発。
淡路島縦断中。 | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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鳴門大橋を突破 | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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地図で確認した所、四国の上岸(瀬戸内海・播磨灘沿い)を走ってる道路らしい。
おお、これなら瀬戸大橋まで一気に行けるじゃん。夜もすっかり更けこんできた今、四国に長居する理由もあまり無いように思われるので瀬戸大橋から本州へ戻る事にしよう。
そりゃ、さっきからよく見かける「八十八ヶ所巡り」の看板・・・確かに惹かれます。百鬼夜号で夜の四国八十八ヶ所巡り!・・・こんな絵になるグッドな組み合わせも無いでしょう。しかし。
こんな車でそんなトコ行ったら順廻り・逆廻りに関わらずなんか憑いて来てしまうような気がするのでやめときます(T_T)。
津田の松原 | |||||||
☆たっく@放浪中in四国さん | |
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あいにく飛び出す鰻絵というのがどこにあるのか判るはずも無く、ただひたすら夜の高速を西へ進む百鬼夜号。
もう簡単には引き返せない所まで来ちゃったこのあたりから、百鬼夜号に対する「どうかこのまま無事に走っていてくれ」という心配が悲願へと変わっていく。
こんなトコで故障なんかされた日にゃ、立派な遭難だ。
頼むわホント。
ありゃ | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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四国かよっ!(三村風に) | |||
☆彼方さん | |
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うどんを啜りながら、ふと思いました。
岐阜から離れれば離れるほど妙にはしゃいでる自分に気付きます。運転しっぱなしですからそろそろ疲れが出てきてもよさそうなものですが、ランナーズ・ハイならぬドライバーズ・ハイというのか、むしろ気が高揚してくるのです。このままどこまでも走って行けそうな勢いです。
・・・俺、疲れてるんだな。きっと。
仕事の事とか人間関係とか、そういった悩みに。きっと。
そんなつもりで始めた旅行ではありませんでしたが、これは潜在的な逃避だった事に気付いたんです。
だから周りが誰も知らない異郷の地に来れば来るほど、故郷から遠く離れれば離れるほど・・・何ものにも縛られない自分を実感し、無責任な開放感に悦びを感じているのです。
俺、頑張ってるよな。バカなりに。
一生懸命やってるよな。上手く出来てるかどうかは別として。
せめて時々でいいから、こういった自分への御褒美みたいな事をしてやらなきゃな。どこかでドレーンしてやらなきゃ、いつかパンクしちまう。
自分が大切にしてあげなきゃ、誰が自分を守ってくれる?
またこれからもいつか・・・一人旅をしよう。
うん。そうしよう。
「高松西IC」から再び高速に戻り、瀬戸中央道に入る。
このまま瀬戸大橋へ突入。中国地方へ渡ります。
さらば四国。
瀬戸大橋〜★ | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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お土産頼むね | |||
☆ヤーマさん [Profile UFOに住む仙人の弱酸性の方] | |
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ここには十年ほど前、一度寄った事があるんですよ。
目的地は”西のディズニーランド”という誰が言ったのか随分と厚かましいキャッチコピーで有名な遊園地「レオ●ワールド」。
今はもう無いそうですが、そんな事からも時の流れを感じさせられますな。
こんな時間だからなのか、それとも渡橋料金が高いせいで利用者が激減してるという噂が本当なのか、駐車場には殆ど車がありません。
まあ記念に写真を一枚撮っときましょう。
(←)ちょっとわかりづらいけど、瀬戸大橋をバックに百鬼夜号の勇姿です。
瀬戸大橋を渡り、岡山に入りました。
日付が変わり、残された時間は一日。翌日の仕事のことを考えると、この辺りが適当な折り返し地点のような気がします。
このまま山陽道を東に向けて帰途につけば、十分な余裕を持って帰れるでしょう。そーでなくても遠出走行距離の最長記録を更新中の百鬼夜号に、これ以上無理させるのはいよいよヤバい感じがします。
帰ろう。もう十分じゃないか。
楽しかった。本当に。
百鬼夜号もこんな遠くまでよく走ってくれたよ。
そう考えてたんです。この時点では。
帰り道を確認する為に地図を開いたTACの、視野の端っこにチラリと見えた文字。
「鳥取県」
ザワザワと心に誘惑の魔の手が襲いかかってきます。
鳥取県。
そう、鳥取県。
鳥取には・・・「あの場所」がある。
ここまで来たら、あそこまで行くべきなのではないか?
この機を逃したら、この先行く事なぞあるのだろうか?
地図で詳しい場所を調べてみる。
うーわー遠いぃぃ〜〜〜〜。
鳥取県の中でも特に最北端の場所。日本海にツンと突き出た角のように尖った半島の、まさに最先端にその町はあった。
地図上で見る限り、そこは遥か彼方の地の果てに思えた。岐阜まで帰る事を考えた時、それは果てしない遠回りのように感じた。
そりゃそーだ。中国地方の一番幅広い部分を、瀬戸内海側から日本海側まで完全に横断しなければならない。
時刻は深夜1時をまわろうとしていた。
そうこうしてる間にも百鬼夜号は倉敷JCTを通過。次に来る岡山JCTまでに決断をしなければならない。
行くか?帰るか?
行くのならば、岡山JCTから岡山道に入らねばならない。そうすれば中国道経由で、かの地へと続く唯一の高速道路「米子自動車道」にアクセスできるのだ。
行くか?帰るか?
決断の時は・・・運命の分岐点は刻一刻と迫っていた。
結局・・・どうすべきか決められないまま百鬼夜号は山陽道を直進してしまいました。帰るコースです。
まあ、いっか・・・そう納得しようとしました。しかし。
もう戻れないと思った途端、怒涛のように押し寄せてくるんですよ。あの場所への想いが。
行きたい!行きたい!あの場所に行きたい!!
普通の車で来ていたなら、ここまで悩む事は無かったでしょう。しかし今、私は百鬼夜号に乗っているのです。
百鬼夜号を駆る者にとって、あそこはどうしても行かねばならない場所だったのです!
TAC、すぐに次の吉備SAに入り、給油。ガソリンスタンドのお兄さんに地図を見せ、「ココに行きたいんです!良い道知りませんか?次の岡山ICで下りて、引き返すしかないですか?」と尋ねます。
百鬼夜号の妖しい姿にたじろいでいた相手も、私が地図で示した場所を見て簡単に納得したようです。なるほどね、と合点がいった様子で「ちょっと待ってください」と別のスタッフに相談しに行ってくれました。
やがてやって来た少し年輩の方が教えてくれた道は、次の岡山ICで下りてそのまま53号という下道を北上し、津山ICから中国道に入るというコースでした。引き返して岡山道から中国道を目指すのと、時間的に大差は無いとの事。
「どれくらいかかりますか?」
「3・・・4時間くらいかな」
「・・・ぐっ」
決心が揺らぎます。
でも行く!決めたんだ!
どこへでも行ってやるぜ!
礼を言って吉備SAを出発する。
百鬼夜号のエンジンの咆哮も、さっきより力強いような気がする。いける!いけるぜ百鬼夜号!!
岡山ICから山陽道を降り、深夜の53号線を失踪・・・いや、疾走する。
岡山から津山へ。そして・・・ | |||
☆たっくさん [Profile EZwebの方] | |
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徹夜で走り続けてます。もう、周りを走ってる車は殆どいません。
こんな深夜に、こんな寂しい山間の一本道を、あの場所へ向かう車なんてそうそういるもんじゃありません。
落合JCTから米子自動車道に入り、あとはもう真っ直ぐ進むだけ。
百鬼夜号は着実に近付いていました。
目的地・・・妖怪を愛でる者達にとって、まさに聖地ともいえるその場所に。
鳥取県境港市。
「水木しげるロード」に向かって。