第六章 新婚生活は胃液の香り

 

 

裸にエプロンとか、

 

 

裸にYシャツなど、

 

 

新婚の夫は新妻に対し、
淡い期待
いらん妄想を抱くものですが、

(オメーだけだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うちのヨメの場合・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹に長座布団巻いてます。
(冷えるらしい)

 

 

 

 

 

 

ダンナを萎えさせる事に関しては卓越した才能を持つ妻。orz

 

 


 

さて、めでたく新婚生活スタート。

新居のアパートはまだ決まっていないので、当面の間は実家に両親と同居である。
5月の披露宴「岐阜場所」までには引越ししたいなと考えている。

ほとんどが親任せとはいえ、こっちの披露宴でも招待する友人のリストアップや招待状の送付などやることは多い。それと同時にアパートも探さなくてはいけない。
四月に入れば祭りもあるし、後述するが従兄妹の結婚式までが急遽入ってきた。そういえばヨメの誕生日も4月だ。
人生で一番忙しい時期になるのかも知れぬ。

とりあえずTACが仕事に行ってる間に、母とヨメの二人でアパートを探してもらうという日々が続いた。北海道の結婚式で結局10日間仕事を休んだので、新婚旅行については現段階で考えるゆとりはない。

それにしても、仕事から家に帰ると母とヨメが二人で夕飯の準備をしている、というのは絵的にもイイもんだな。

 

 

 

 

――その事件が起きたのは、4月14日(土)。
美濃町祭りの一日目が終わったその夜のことだった。

 

 

 

 

 

美濃町祭りは四月第一土日の2日間行われる。
TACは毎年、親父と共に花神輿の担ぎ手として一日目は美濃町、二日目は地元の町内巡りへと駆り出される。
そして一日目の夜には、TAC家にて酒宴が開かれるのが毎年の恒例になっている。

今年はヨメを迎えてから初めての祭りということで、大いに盛り上がった。
そしてその中でもやたらチョーシこいてたのが約一名。そう、ヨメである。
TACがちょっと居眠りしてる間に薦められるままに日本酒をあおり続け、気がついた時には既にかなりのハイテンションになっていた。

 

前科もあることだし、こりゃヤバいかなー・・・と思う。そういえば家族にはまだ彼女の酒癖の悪さを伝えていなかった。

 

 

 

 

 

 

そして、悪い予感は的中。

酒宴が終わり、一足先に部屋へ寝に行ったヨメ。少し遅れてTACが寝室に入ると・・・

 

いきなり鼻を突く、なんか酸っぱい異臭。

 

 

 

 

 

・・・・当然ヨメは、翌日二日酔いで一歩も動けなかった。

二日目の町内巡りで、当然TACの新妻のお披露目があると思い込んでいた町内の皆に、「オイ、嫁さんはどこにいるんだよ」と何度も聞かれた。
「二日酔いでダウンしてます」とはさすがに言えなかった。

 

 

 

 

・・・しかしまあ、なんですな。

新婚って、最初の頃はダンナに遠慮してオナラすらまともに できないウブな妻も多いというのに、

 

 

 

 

 

 

結婚一ヶ月目を待たずして、TACは既に妻のゲロを体験。

もうこの先、何が来ても怖くないような気がする。

 


 

・・・振り返ってみると、ヨメが何かやらかす時というのは大抵「よりによって大切な日」だったりすることが多い。
おそらく幼少時は遠足当日の朝に熱を出してしまうタイプのガキだったに違いない。

――その日もまた・・・・・よりにもよって彼女の誕生日だった。

 

 

4月26日。

その日の夜は、両親と4人で外食と決まっていた。
5月の披露宴岐阜場所の会場に決めている地元のホテルに和室を予約し、会席を食らう予定。ケーキや花束も準備してある。
我が家にやってきた嫁の最初の誕生日ということで、両親も奮発したようだ。

しかしそれとは別に。
実はもう一つサプライズが用意してあった。妹の発案で、外食から帰ってきたヨメを更に驚かそうと秘密裏に準備が進められていたのだ。

つまり段取りはこうである。

(1)ホテルで会食後、車で帰宅。

(2)家に入る時、両親とTACは「車に忘れ物した」等の理由をデッチ上げて引き返し、とにかくヨメを先に一人で家に入らせる。(ココが一番重要)

(3)暗い居間にヨメが入ると、蝋燭の明かりのもと仮面をかぶった妹が一人、電子ピアノで「Happy Birthday」を弾いている。

(4)次の瞬間、部屋のライトを点灯。別室に待機していた妹夫婦と姪どもが「おめでとーー!」と言いながらプレゼントや花束やケーキを持って突入。

(5)ヨメ、大感動。

 

会食中も妹とのメール交換で密に連絡を交わした。
「こちらは実家に侵入完了。全員準備OK」
「会食は八時頃に終わる予定」
「ホテルを出る時に連絡されたし」
「家に着いた時、部屋の電気が点いてないよう早めに消灯して備えよ」
「必ずヨメさんを先に一人で家に入れてよ」

計画は全てカンペキなはずだった。

 

 

・・・問題はヨメの方に発生した。

 

会食中に、みるみる顔色が悪くなっていくヨメ。

TAC
「・・・どうした?」
ヨメ
「なんか・・・お腹イタイ・・・」

「何かに当たった?」
ヨメ
「多分、寒くてお腹冷えちゃったんだと思います・・・大丈夫です」

「大丈夫なもんか。早く帰った方がいい」
TAC
「ええええ?チョット
・・・予定より早過ぎても困るんですが・・・

 

結局デザートもそこそこに、早々家へ帰ることになってしまった。
ヨメがトイレに行ってる間に、待機中の妹たちにメール。

「なんやら雲行きが怪しくなってきました」

 

 

 

 

そして帰宅。

「ヨメを先に居間へ入らせよ」との御達しだったが、状況は既にそれどころではないようだ。
ヨメは玄関に入るやいなやそのままトイレに直行してしまい、しばらく出てきそうにない。仕方がないので荷物を持ったTACが先に居間に入る。

暗い居間の中には、ドキンちゃんの仮面七色アフロを被った妹が、電子ピアノの前にスタンバっていた。
お互い凍りついたまま、しばし無言で見つめ合う二人。

 

 

 

 

 


「・・・・・・・・なんでアンタが先に入ってくんの・・・・・・・・」

TAC
「・・・・・・・・仕方ねぇだろ」

 

 

 

ヨメがトイレから出てくるのに合わせ、無理矢理敢行した「皆で突入&ハッピーバースデー大合唱」は一応ヨメを驚かせたが、その後は体調不良を理由に早々に寝室に引っ込むヨメ。

・・・結局サプライズは不発に終わり、ガッカリだった。
後は皆で、主役不在の誕生パーティを続けたのだった。

 

 

みんな、すまんかった。
でも気持ちは十分本人に伝わったはずだ。ありがとうよ。

こんな困ったちゃんな義姉だけど、これからもずっと仲良くやってくれ。

 

 

 

 

 

 

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